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京都館

京都の伝統工芸のミライ、
クラウドファンディングで何とかできますか?
京都LOVERたちで、考えてみました。

2月27日、東京神谷町。小山薫堂館長の事務所1階にある「ORANGE brainery(https://orangebrainery.com/)」に約40名の京都ファンが集まった。
京都に数多く残りながらも、衰退する一方の伝統工芸に新しい息吹を送り込み、その魅力を多くの人にしってもらうためにはどうすればいいのか――。

こうした課題を解決するためのアイデアを、多彩な頭脳と世界中の眼が集まる東京という街で考え、育み、発信する。そんな狙いのもとに京都館の“学び舎”が開催されたためである。

具体的なお題は「京都の伝統工芸を“東京”から世界へ発信するにはどうすれば?」。漆職人の島本恵未さん、Makuake代表の中山亮太郎さん、そして未来定番研究所所長の今谷秀和さんの3名をゲストに、ワイガヤと考えた。

 

 

<プロフィール>

左・今谷秀和さん(未来定番研究所 所長)

1959年滋賀生まれ。1982年乃村工藝社入社。1987年伊藤忠でまちづくりに携わった後、電通へ。イベントや博覧会などを手がけた後、ネット広告を手がける。2017年大丸松坂屋百貨店の新たな取り組みである「未来定番研究所」の所長に。

左中・中山亮太郎さん(株式会社マクアケ 代表取締役社長)

1982年東京生まれ。慶応大学卒業。2006年に株式会社サイバーエージェントに入社後、2013年に株式会社マクアケを設立し、代表取締役社長に就任。同年クラウドファンディングサービス「Makuake(マクアケ)」をリリース

右中・島本恵末さん(漆芸工房 表望堂 代表)

1988年和歌山生まれ。京都精華大学卒業。漆芸家村田好謙氏に師事、京都市産業技術研究所にて学ぶ。その後漆芸工房「表望堂」を立ち上げ、寺社仏閣の修復や制作をしながら作品を制作。2015年度「京ものユースコンペティション」グランプリ

右・モデレーター・各務亮さん・電通京都支社

電通京都で、グローバル企業の海外戦略を担当しつつ、伝統工芸の海外発信プロジェクト「GO ON」、太秦映画村を大人のエンタメパークとして再起動さえた「太秦江戸酒場」など各種文化施策プロデュースにとりくむ

■“いいもの“だけでは売れない時代。伝統工芸は、どうする?

 

島本さんが左手に持っているのが、蒔絵を施したグラスの作品。

各務 本日、蒔絵師の島本さんには、すてきな作品を持ってきていただきました。

島本 ワイングラスに蒔絵を施したものをお持ちしました。“蒔絵”とは漆で絵を描いて、そのうえに金粉をまき、漆で再度固めたあと、炭で磨いて金の絵を描く技術。普通、お椀やお重に描きますが、今はそういうのあまり使いませんよね。そこで、普段使いしやすいグラスを選びました。多くの方に、少しでも本物の蒔絵の良さに触れていただきたい。「これ何だろう?」「おもしろい質感だな」「漆、いいな」と感じてもらえる機会を増やしたくて、こうした試みをしています。

島本さん自ら探し出した、蒔絵に似合うグラスに細工を施す。

各務 「何だろう?」という意味では、大きなオブジェも手がけられていますよね。そういったものも漆ですか?

島本 はい。日本橋に新しくできた株式会社太陽生命様に納めさせて頂いたものですが、これも漆。「乾漆」という、仏像作りのために生まれた技法です。木の仏像に漆と麻布を貼り重ねて、最後に木を抜き、漆のハリボテをつくる。火事のとき仏像を持ち運びやすくするため、生まれた技法と言われているんですよ。この技法が自動車やバイクの外装に使われるFRP(繊維強化プラスチック)の元になった、という説もあります。

各務 おもしろいなあ。ただこうした可能性のある漆も、今は担い手が少ないとか。

島本 そもそも市場が小さくなり、「経済として成り立っているのか?」という状況です。これまでどおりのものをつくっていれば、質の高い仕事をしていればいいという時代ではなくなっているんだと思います。それでいて、職人になる人間はそもそも「できれば人と会わずに引きこもって仕事をしたい」という方が多いですからね(笑)。だから一層、私は外に出て、少しでも漆の良さを伝えたい、という思いが強いです。

■Makuakeと大丸松坂屋が見立てる、新しい売り方、作り方

『Makuake』のビジネスモデルにもみなさん興味津々。

各務 さて、本日はこちらに、そんな伝統工芸の課題を解決するヒントを教えてくれそうな、心強いお二人がいます。まずは日本を代表するクラウドファンディングサービス『Makuake』の中山さんです。

中山 『Makuake』は2013年からスタートしたクラウドファンディングサービスです。製品や店舗、あるいはコンテンツなどを作りたい「実行者」の方が、まず企画中のアイデアをMakuakeのサイト上にプレゼンのページを作る。すると、そこに応援したい「支援者」が、Makuakeのサイトを介して先行予約のような形で応援資金を出せる仕組みです。

各務 よく、個人的にもチェックさせていただいていますが、ついつい見入ってしまうサイトですよね。

中山 ありがとうございます!実際に、実は「資金調達」そのものは二の次、三の次。Makuakeのサイトでは、実行者が製品開発や店作りの進捗状況をアップすると、支援者から「こうしてほしい」「こうなるともっといい」と意見が集まる。貴重なテストマーケティングができるんです。

斬新な製品が続々生まれるので、メディア担当者やショップバイヤーが常にチェックしてくれています。具体的な支援者数で「見込み客」が分かるから、Makuakeそのものがコンテンツやバイイングのネタ元になっているわけです。

各務 一昨年話題になったアニメ映画『この世界の片隅に』や、京都で言うと『祇園祭』の警備費用などの支援も話題になりましたね。それらを見ても、Makuakeでは実行者の方と支援者の方のコミュニティの繋がりがとても強くて、すばらしいなと感じます。

中山 サービスの初期のファンとなる、「応援顧客」の力はすごく大きいんですよ。『この世界の片隅に』も最初に支援してくれた方々が、熱心に口コミでひろげてくれたんですね。だからこそ、企画をプレゼンし、出資をもらった後のアフターケア、進捗状況を伝えることがとても大切になる。それは伝統工芸の支援でも、同じことがいえると思いますね。

皆さんの得意とするビジネスのお話に、参加者のみなさんもじっくり耳を傾けてる。

各務 なるほど。今谷秀和さんもとてもユニークな活動をされていますが、所長をされている「未来定番研究所」の説明からしてもらえますか?

今谷 未来定番研究所は一昨年生まれた大丸松坂屋百貨店のブランディングに関する研究所です。大丸松坂屋百貨店は10年前に創業400年の歴史を持つ松坂屋と、創業300年の大丸が合併して生まれた百貨店。ちなみに大丸は京都発祥なので京都と縁が強く、祇園祭の先頭は必ず京都店店長が歩く風習がある。また新選組のダンダラ羽織は大丸が収めました。

各務 新選組は、まだお支払いが未だ済んでいない、って聞きますよね(笑)。

今谷 ですね(笑)。それくらい歴史のある会社だけに、マーケティングやブランディングに関してあまり自発的に動いてこなかったという面があるんですね。しかし、現代は人々が豊かになって、モノが売れない時代になった。いまこの時代に百貨店が売る「定番」とは何か。これから定番となっていくものはなにか。そんなことを研究して、百貨店経営にフィードバックしていくのが私たち研究所の役割です。最もわかりやすいのはオウンドメディアの運営。いまは、『F.I.N.』という名で各界のの目利きの方々にインタビューして、「未来の定番となるようなモノ、コトとはなにか」を探っています。

各務 ずばり、未来の「定番」として大切になってくることは、何なのでしょうか。

今谷 キーワードは「ストーリー」だと思っているんですよ。人は「欲しいもの」は少なくなりましたが、ものづくりのストーリーやバックボーンにある含蓄のようなものは皆大好きですよね。

「こんなすばらしい職人さんが作ったものならば買いたい!」という方はいる。島本さんの先ほどのお話「実は漆の技法はFRPに活きている。それを使ったオブジェだ」と聞いたら「みてみたい! ほしい!」となる人は多い。しかし、知らなければ、そこまで興味を持って頂けない。そうしたストーリーの提供に、カギがあるような気がします。

■京都LOVERの「こねくりまわす」力をこれからも。

会場に集まった皆さんを、5~6人ごとにグループわけ。グループごとに賑やかなブレインストーミングが行われた。

各務 ゲストのみなさんのトークをもとに、会場にお集まりいただいた京都ファンの方々に「京都の伝統工芸を東京から世界へ発信するにはどうすれば?」に対してブレインストーミングをしていただきました。いくつか、アイデアを伺ってみましょう。

参加者 東京のメリットは大勢の人がいることだと、思います。人と人が直接つながったコミュニティがつくりやすい。今日のような場で、支援したい伝統工芸の作り手に直接クラウドファンディング的に支援できたらおもしろいのではないでしょうか。投げ銭モデルで、アナログなクラウドファンディングを!

各務 さっそくいいアイデアが出ましたね。今日の島本さんの話しを受けたうえで、「漆工芸のおもしろさ」を感じて、それを伝えるべきというアイデアですね。

今谷 やはり丁寧に説明すること、ストーリーを伝えることは大事ですね。今日は、島本さんの作品が売れるんじゃないですかね(笑)。

各務 では、もう1チーム、お願いします。

参加者 意外な場所で伝統工芸に触れてもらえれば、ぐっと興味を持ってもらえるはずと思いまして、地下鉄の一車両だけ、京都の伝統工芸でリノベーションするのはどうでしょうか。東京メトロの一車両のイスを西陣織、つり革を漆塗りでつくったり。

中山 このアイデア、今すぐいけそうですね! 皆さんの中に広告代理店の方、いらっしゃると思うので、京都市さんとぜひ提案していただきたい(笑)。

各務 楽しみですね(笑)。では、もう1チームお願いします。

参加者の方々のあつく楽しい議論!

参加者 東京にはたくさんの美術館があるのが魅力です。たとえば、工芸関連の美術館のみならず、西洋美術館だろうとなんだろうと、1週間だけすべて京都に言われのある作品を並べたらストーリーも伝わり、インパクトがあるのではないでしょうか。1週間、都内の美術館のすべてを京都しばりで展開しましょう!

各務 これは、かなり盛り上がりそうですね。

島本 皆さん本当に、しっかりとしたご意見をくださることに感動しています。私たち職人も引き込もている場合じゃないなと(笑)あらためて、外に出て、今日集まった皆さんのような方々と積極的にコミュニケーションをすることが大切だなあと感じました。

中山 ですね。今日は京都出身でも、京都に住んでいる方でもない参加者の方が多いんですよね。第三者の京都好き、京都LOVERの方々の愛情、温度がすごいなと。「東京から発信…」というよりも、「東京でアイデアをこねくりまわす…」というのが得意なのかなと感じました。

各務 この熱量は、京都館としても大切にしていきたい。伝統工芸の発信も継続的にこねくりまわして発信できればいいと思っています。本日はありがとうございました!

参加者全員で記念撮影。この後も延長戦のように多くの輪ができ、京都談義が続いた。