祇園祭、宵山の深夜。もうすぐ時刻を回って次の日になりそうな予感を感じて、明日はこの近くも屋台がでるのかな、などと話しながら大雨の烏丸御池あたりを歩いて目指すのはBAR「志庵」です。いつもの雨は嫌いだけど、深夜の雨には何故か心踊らされて足取りも軽く向かいます。
今回のBARに連れてくれたのは祇園のお料理屋さんで働く少しだけ年上のお姉さん。なんとここ、深夜3時まで営業されている日もあるらしく、飲食店など夜遅くまで営業している働き者たちの憩いの場となっているそうです。「3時まで開いてるBARが家の近所にあんねん!」と自慢げに教えてくれた時からずっと気になっていたBARでした。
雨の音だけが響く街をてくてく歩いていると、「志庵」のあるビルに到着。郵便受けが並ぶ普通の集合住宅のようなビルの廊下を突き当たりまで進むと、磨りガラスの扉が見えてきます。中に入ると大きなカウンターと二つのボックス席が。すでに廊下をいくらか進んできたのにさらに奥に広がる広い店内に驚きながら、カウンターの真ん中に座らせていただきました。
時刻は0時前ですが夜はまだまだこれから、と言わんばかりに常連さんの姿が。この時間にお酒を飲む仲間がこうしているのは嬉しいことです。そして、活発なのは私たちだけでなく目の前で泳ぐ金魚も。涼しそうに立方体の水槽の中を泳ぐ姿が美しい。その奥でマスターが優しく迎えてくれています。
季節のフルーツを使ったカクテルがずらっと並ぶメニューに目移りしながらも一杯目はハイボールに。ウイスキーの好みは?と聞いてくれるので少しBAR上級者になったつもりで、どきどきしながら頼みます。膨大な数のウイスキーの中からデュワーズの12年というウイスキーでハイボールを作ってくれました。
早速私たちの前に並んだお酒を前に、落ち着いた店内に合わせていつもより少し丁寧に乾杯をして口に入れると、はちみつのような甘い香りとやさしい口触りが印象的で緊張もほぐれる嬉しい一杯。濃いめのハイボールが身体に染み渡ります。
すっかりご機嫌になって目の前のグラスが何杯目のハイボールなのか曖昧になってきた頃に、メニューをじっくり見ているとお酒に合うフードのメニューが豊富なことに今更気がつきました。ここに来るまでにしっかりご飯を食べていた私たちですが、そんなことは忘れたことにしてカレー……?大葉とサバのホットサンド……?と真剣に悩んでいると、マスターから「初めて来たんだったらカレー食べて!」との声が。即決して、レーズンバターと合わせて頼みました。
このカレーが本当に、美味しい。スパイスの効いた本格的なカレーで、サラッと食べられてしまうのでまるでそこにあったことが嘘のように、あっという間に完食してしまいました。そして横には福神漬けとらっきょうのお漬物が。マスターのカレーへのこだわりが伺えます。付け合わせが二つあることがいかに嬉しいか、という話が「おにぎりの具は何が一番か」という話に派生するまではもうごく自然な流れ。マスターも巻き込んでそんなことを真剣に語り合ううちに、時刻はすでに2時を過ぎていました。
気づけば初めて行ったとは思えないほど暖かく迎えてくれる「志庵」に魅了された私は、こうして書きながらも次はいつ行けるかな、と次回への期待を止められません。眠れない夜、帰りたくない夜、なんでもない話で笑いたい夜、どんな夜でもここへくれば受け止めてくれるはず。帰路に着く私たちに見えなくなるまで手を振って送り出してくれるマスターを見ながら、いい夜だねと口々に言いながらようやく眠りにつこうとする私たちでした。
住所:中京区三条通烏丸西入御倉町68番地1 プリオール烏丸三条一階奥
営業時間: 月 21:00-26:00
火、水、木、日 19:00-26:00
金、土、祝前日 19:00-27:00
定休日:なし
アクセス:烏丸線、東西線「烏丸御池」駅六番出口より徒歩3分
烏丸御池「BAR志庵」