京都「いいBARに出会いなさい」

三条室町「and…Rouge Bar」

毎月一軒、BARの記事を書くようになってもう半年が経とうとしています。といってもまだ6本ほどしか書いていないけれど。この間「なんでみんなBARにわざわざ行くの?家でもいいのに」とお酒を飲まない人に言われて、なんだかいい返事を即答できなかったなんてことがありました。悔しい。こうして毎月記事を書いていると行くたびにここに書くためのネタ、いや土産話的なものを探そうとして酔っぱらった頭を奮い立たせながらBARをじろじろと観察しているわけですが、正直そんなことをしなくてもぼーっといるだけでいろいろある。

ここのカレーは迎え酒で必死に調子を取り戻そうとしてる時でも美味しさに感動できるんだから嬉しいな、とかこのお店のハイボールの作り方は盗みたいな、とか、常連のおじさんたちのなんとも言えない渋い良い感じがたまんないな(そんなことは書きにくいですが)とか。こんな土産話を探さずとも暗闇の中、そこら中に転がっているのがBARの魅力なんじゃないでしょうか。そんなふうにやや時間がかかりながらその質問になんとか答えられたことにして、今回のBARはホテルの片隅にある「and…Rouge Bar」です。

リゾート気分で頼む一杯

ホテル特有のラグジュアリーな香りに包まれて、旅行気分にさせてもらえるこのBARはヴィラ三条室町というホテルの入り口すぐに現れます。普段は店長の女性バーテンダーがカウンターに立たれているそうですが、伺ったこの日はオーナーの藏貫さんが立つ日でした。

すでにリゾートに来たような気分になっている私は一杯目を普段なかなか頼まないレッドアイに。洒落た一杯をついつい頼ませる一押しがあるのがこのお店の空気感の成せる技です。レッドアイとはビールをトマトジュースで割ったカクテルで、二日酔いで充血した赤い目が名前の由来とも言われている、お酒を愛する私たちにはアイロニカルな一杯でもあります。ビールの苦味がトマトの酸味とよく混じり合って熱気の冷めない夜にはぴったり、という具合で生ビール以上にごくごく飲んでしまうのが危険です。

非日常とローカルが共存する空間

このBAR、お客さんがホテルの宿泊者ばかりだろうという想像とは裏腹に、遅がけから京都の住民がわらわらと集まってくるのがおもしろい。観光地京都でホテルのBARに多くの地元民が集まるって珍しいことではないでしょうか。非日常とローカルな安心感がうまい具合に隣り合う、唯一無二の存在感をひしひしと感じさせられました。

そんなこのお店のオーナー、藏貫さんの胸には様々なバッジが布をせめぎ合うように輝いています。思わず尋ねると、ソムリエはもちろん、ラムコンシェルジュ、ウィスキープロフェッショナル、テキーラマエストロ(!)とお酒にまつわるあらゆる資格を網羅されているとのこと。近頃街に気がつくとできていて、その数を増やしている謎の店「お酒の美術館」の丹波橋店も運営されているそうで、とにかくお酒好きが人格を形成してる、というようなありがたい人物です。

次の一杯に悩む時、ハイボールのウィスキーを決めかねている時に「これ飲んで欲しいです!」と力強く提案してくれる心強さは、やはりお酒の専門家に身を委ねることのできるBAR特有の大きな魅力です。私たちはそれに素直に従うことによって今日も嬉しい一日の終わりに浸ることができるのでしょう。ああ、BARってありがたい!

and…Rouge Bar

住所:中京区三条室町上ル役行者町375 ヴィラ三条室町・京都
営業時間:17:00-25:00
定休日:不定休
アクセス:地下鉄「烏丸御池」駅より徒歩2分


京都「いいBARに出会いなさい」

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