のれん分け 古都の魅力を発信してきた京都館。その役割を14の拠点に「のれん分け」

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全国の自治体アンテナショップの先駆けとして、東京にいながら京都の情報や商品が手に入ると親しまれてきた「京都館」。2018年3月に新たな展開に向けていったん閉館したが、その後の京都の情報発信の役割を担うべく、都内に店舗など拠点を持つ京都ゆかりの企業や大学に京都館の「のれん分け」が行われた。

首都圏の人々と京都をつなぐコンシェルジュ的存在に

京都館「のれん分け」のお披露目式で、協力事業者に対してのれん分け証を渡す小山薫堂京都館館長と、門川大作京都市長

首都圏の人々へ向けた京都の情報発信拠点として、2006年に東京駅八重洲口前にオープンした「京都館」。館内には、京都の旬な情報が集まる「情報コーナー」や伝統工芸品を紹介する「伝統工芸ギャラリー」、京菓子や地酒といった名産品がずらりと揃う「販売コーナー」などを完備。足を運ぶだけで京都に行った気持ちになれると、国内外の京都ファンからの支持を集め、年間約25万人以上が来館する人気スポットだった。ただ、残念ながら入居するビル建て替えのため、2018年3月に閉館。2020年の東京オリンピックを目処に移転再開を目指す。
2018年2月26日(月)に京都市役所で行われた京都館「のれん分け」のお披露目式では、「のれん分け証」が各所に手渡された。京都館再開までの期間中、京都の情報を発信する役割の一部を引き継いでもらう。
「のれん分け」されたのは、京都の老舗料亭のほか,和菓子や香りなどの専門店、大学といった、京都に本社、本校を構え、首都圏に足場を持つ11の企業や大学・全14拠点。今後、各店舗などでは、観光パンフレットや京都への移住に関する資料などを配布し、京都の情報提供を担う。また、各所の特長を生かしたワークショップなどのイベントの開催も計画中だ。今回新たに生まれたいわば「民間の京都館」は、銀座、丸の内、新宿、青山など都内各地にあるので、気軽に足を運んで京都の文化や味、情報に触れることができる。
門川大作京都市長は「文化庁の完全移転が決定した京都では、これからますます首都圏での情報発信が重要と考えています。ここに集まっていただいたのは、“京都そのもの”といえるそうそうたるみなさん。京都館の一時閉館を、マイナスではなくプラスに変えられるよう、ここでのネットワークを生かしてさらなる京都の魅力発信にご協力いただきたい」と挨拶。その後、放送作家・脚本家の小山薫堂京都館館長は「今でこそ首都圏にはたくさんの自治体が運営するアンテナショップがありますが、市主導による拠点を首都圏に作ったのは京都が最初。時代をリードしてきた京都館は、特産品の販売に留まらず、人々と京都をつなぐコンシェルジュであり、拠点であるべきだと思います。これから[のれん分け]の企業間交流から生まれる化学反応に期待しています」とメッセージを発信した。

京都の情報発信を担う事業所
<それぞれの熱い思いとは!?

今回「のれん分け」に認定された事業者は、年1回、約1カ月にわたり都内各地で開催されるイベント「京あるき in 東京」に参加し、講演会やワークショップのほか、食などから京都の魅力を発信してきた11の事業所だ。その中で、当日「のれん分け証」を受け取った9事業所の代表者のみなさんに、これからの抱負などをうかがった。

祇園辻利
株式会社祗園辻利
代表取締役 三好正晃様

管理職は京都出身ですが、スタッフは関東出身者が多い。「のれん分け」による企業間交流によってスタッフ教育もさらに充実させたい。/祗園に店を構え70年。宇治抹茶を使ったスイーツで知られる「茶寮 都路里」として、大丸東京店へ出店。
京都大学
国立大学法人京都大学
産官学連携本部 調査役
南了太様

京都の10大学が連携をし文化・芸術・科学を学術的な知見から発信中です。2017年10月に都内で行った文化・芸術イベントの盛況ぶりから、京都に関心を寄せる人々の多さを実感しました/ノーベル賞受賞者を多数輩出する国立大学。2017年、新丸ビルに京都アカデミアフォーラムin丸の内を設立。
下鴨茶寮
株式会社下鴨茶寮
取締役総支配人
野口拓勇様

全社員に「京都検定」の受験を推奨しています。社員が営業マンとして“京都”のよさをPRしながら、京都館のお手伝いもさせていただきければと思います/1856(安政3)年創業の老舗料亭。京都・下鴨本店を構え、銀座店を持つ。

松栄堂
株式会社松栄堂
代表取締役
畑正高様

最近、都内2カ所で京都についてお話しさせていただく機会があり、京都ファンの多さを肌で感じています。これからはアウトプットをがんばっていきたいです/創業は1705(宝永2)年に遡る老舗の香り専門店。銀座、青山、人形町と東京に3つの直営店を持つ。

鶴屋吉信
株式会社鶴屋吉信
常務取締役
柴田秀紀様

2年半前まで東京店におりましたが、首都圏のお客様は京都のことを知りたいと思う方々が多いと日々感じていました。京都の魅力を幅広く発信する、京都館の再開を心待ちにしています/ 「京観世」と「柚餅」が代表銘菓の菓匠。東京には直営店として2店舗を構える。

西利
株式会社西利
営業部課長
岡田英樹様

私は20年の関東生活を経て京都に帰ってきまして、京都について知らないことが多いと実感しています。改めて勉強し直しながら「のれん分け」に恥じない情報発信をしていきたいと思います/京漬物の製造・販売を行う専門店。東京では「東京コレド室町店」を出店。

フクナガ
株式会社フクナガ
営業本部 次長
青木茂様

京都の文化が会話などに表れるような接客を心掛けています。東京店の者もほぼ京都出身なので、店に足を運んでいただいて京都を感じていただけたら/「LIPTON」「かつくら」などの飲食店を展開する。東京では「かつくら新宿高島屋店」等11店舗を出店。

宮井
宮井株式会社
代表取締役
宮井宏明様

京都には染色・工芸分野で優れた技を持つ中・小企業がたくさんあります。東京に拠点を持たないそのような企業も露出できるような機会が、作れたらと思います/風呂敷専門店・唐草屋を3店舗展開する製造卸問屋。東京・人形町には「東京唐草屋」が。

モリタ
株式会社モリタ
代表取締役
吉岡浩人様

弊社は東京に出店して約15年になり、普段から京都産の食材にこだわった料理を提供しています。今回京都館の一部を担えるということは大変光栄です/1869(明治2)年に創業し、すき焼き店「モリタ屋」として、京都3店舗、都内に2店舗を展開。

これらの企業だけでなく、ミシュラン三つ星の祗園の名料亭「菊乃井」を運営し、赤坂にも店を構える株式会社菊の井や、女性下着を主軸とした衣料品メーカー「ワコール」のグループ企業で、青山「SPIRAL」の運営を行う株式会社ワコールアートセンターも「のれん分け」を受けた。京都を代表する企業・大学による、京都の魅力発信に期待が高まっている。