京都暮らしプラス・ワン ♯04大西常商店・大西 里枝さん

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食、器、服、アート、そしてサブカルチャーまで、良質なプロダクトや文化が生まれ、集まる京都。
そんな京都のエッセンスを暮らしにプラスすることで、毎日はもっと豊かになる。
様々な分野で活躍する京都の人々に、自分の“プラスワン”をお聞きします。

八坂神社の西楼門から西へのびる四条通は、京都市内のメインストリート。通り沿いにはデパートや様々な店が建ち並び、八坂神社から西へ花街・祇園、先斗町(ぽんとちょう)、買い物客で賑わう河原町、そしてオフィスビルが多い烏丸通りへと街の色が移ろいます。そんな四条通りに平行して4本南の松原通りは昔ながらの商家や商店が多く、さしずめ商いの街。ここで立派な商家の京町家と“扇商”を守っているのが、大西常商店の四代目・大西里枝さんです。

私が育ててもらったように、わが子も育てたい


「もともと、江戸時代から日本髪を結う時に髪の根元を束ねる“元結”を作っていたんですが、日本人が洋装を取り入れていく段階で、元結と同じ素材で作れて、得意先もほぼ同じである和装小物へ移行し、昭和初期に初代・大西常次郎が扇商を始めました。私は一人っ子なので、いずれ継ぐんだろうなと思って育ちましたが、大学卒業後はまず別の大手通信会社へ就職。自社のソリューションをご提案しながら、地域の企業を横断的に見ることができたのは、今に繋がるいい勉強でした。結婚・出産を経て、扇子を商売にして私を育ててもらったように、私の子どもも同じように育てていきたいという思いと、この京町家をなんとか生かして次の世代に繋いでいきたいという思いが段々と強くなり、4代目となりました」

なくていいものをどう届けるかという難しさ


“末広がり”の形をしている扇子は、冠婚葬祭や七五三など、人生の節目には必ず身に着ける道具。大西常商店では、様々な扇子を製造し問屋や小売店に卸しています。

「特に大西常商店が扱うのは、扇面に京都、扇骨に滋賀の素材を使い、京都で仕立てられている等の条件が揃った京扇子。和の色彩ならではの美しさと、丁寧な手仕事が魅力ですが、一般的には“涼を取る道具”で、季節もの。1300年も前からほとんど同じ形で日本の生活の中にありますが、扇子に変わる様々な道具が発達している現代では、受け入れられにくくなっています。なくていいものをどう届けるか、そこが難しいところです」

そこで大西さんが始めたのは、扇子の絵付け教室や投扇興体験でした。「まずは“買う”ということより、扇子を使った楽しみ方を知っていただく。扇の文化の理解を深めつつ、とにかく色んなやり方でこちらを向いてもらうことが大切」と、新商品の開発も手がけ、クラウドファンディングを立ち上げました。

「扇子は、87もの工程を経て完成します。大きく分けると扇面、扇骨、絵付けの職人による完全分業制で、当店も代々付き合いがある15~20人の職人とやり取りをしています。季節商品と言ったように、扇子が売れるピークは7~9月。10~12月で生産して、また4月から売り出すという流れがあるので、職人さんに通年偏らずお仕事していただけて、冬の時期にも売れる商品をと考え、扇子の加工技術を活かしたルームフレグランスを開発したんです」

その反響は大きく、立ち上げたクラウドファンディングも目標金額を大幅に越えて達成し、今は全国のデパートや有名セレクトショップで取り扱われる商品になりました。

そばに置きたいのは、作り手を感じる使い心地のよいもの



扇子用に薄く加工された竹の扇骨に「保香性」がある特性を活かして、大西さんが形にしたルームフレグランス「かざ」。繊細な透かし彫りが華やかな扇骨から、白檀や檜、八重桜の香りがふわりと漂います。香りを調合したのは京都の工房、器は清水焼というこだわりです。

「女性に人気がありますが、お寺さんが法要の際の返礼品に使ってくださることも多いんです。意外性に喜んでいただいているのかも知れません」

「扇(あお)ぐたびに香りが匂い立つ『うつし香』もオリジナル。かつて平安の時代には、扇に好みの香りを焚きしめて香りを移し、想いを伝えていたそうです」

あわ雪、春めく、月かげなど、移りゆく季節を絶妙の色彩で表したデザインはファッション性が高く、扇子の魅せ方の幅が広がりそうです。

大西常商店の4代目として企画開発や営業、検品など幅広くこなす大西さん。プライベートでは妻であり、5歳の男の子の母でもあります。

「家族が揃うのは、朝ごはんの時間のみ。だから、必ず毎朝家族揃って朝ごはんをいただきます。これは毎朝使っているお気に入りの器たち。小ぶりの茶碗は、釜座にギャラリーがある三吉坊本間 哲さんに結婚祝いでいただいた夫婦茶碗、卵焼きの色が映えるブルーのお皿と、お漬物にぴったりの六角皿は清水焼・トキノハさんで求めたもの。そしてオシドリの箸置きは、錫や銀の老舗金属工芸品店・清課堂さんのもので、こちらも知人からの結婚祝いにいただいたものをずっと愛用しています」

普段は着物姿で過ごされている大西さんですが、月に一度は夫婦で20kmマラソンをしているそう。

「西京極の辺りから桂川沿いを嵐山方面へ北上して一条通り、きぬかけの道(金閣寺付近)を通り、北野天満宮の近くを通って南下し20km。きぬかけの道は結構な坂道になっていて、疲れもピークなのでよくケンカするポイントです(笑)」。


大西常商店の建物は、150年ほど前に建てられた商家の町家。15年前には、大西さんのご両親が建物の中心となる4つの柱と大黒柱だけを残してもう一度建て直したというこだわりの詰まった町家です。広い間口に紅殻(べんがら)格子、三和土(たたき)、店の間、通り庭、奥庭、茶室と本来の京町家そのままで、スペースのレンタルも行なっています。

「私が大切にしたいのは、職人さんも含めた扇子の文化と京町家。とにかく色んなやり方で、こちらを向いていただく。扇子の文化を知っていただく。できることから動いて、次の世代に繋いでいきたいですね」

大西常商店4代目
大西里枝さん

WEB:https://www.ohnishitune.com

 
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