京都「いいBARに出会いなさい」

左京区元田中「サロンド毘沙門」

BARが暮らしの中に自然とある人生ってなんだか憧れませんか。「行きつけのBAR」とか「知り合いのBAR」なんてことをいつか口にしてみたい。それも、モジモジせずに。
遠い未来、大人の落ち着きを手に入れて、その上おしゃれな人脈みたいなものができたら私にもそんな言葉を啄む日が来るのかな、とか。「BAR」と聞くと、妄想が大得意な私は小説やドラマに出てきた素敵なBARとそこにいる人たちを思い浮かべながら、こんなことを考えてしまいます。

ミラーボールと一緒に、お酒も話もまわる夜

しかし今回そんな遠い未来と思っていた妄想の内側に一歩近づけるきっかけ、先輩のススメで元田中「サロンド毘沙門」へお邪魔することに。心地良い緊張感と期待に心踊らせながら、20時ごろ元田中へぷらぷらと向かいます。

元田中といえば、あまり縁のない私からするとちょっぴり謎な街。河原町など京都の中心街から電車やバスで30分ほど北へ揺られながら、本格中華料理屋さんが異常に軒をつらねる光景が見え始めたら、そこが元田中です。周辺には京都大学や京都芸術大学があるため、学生にあふれる街というイメージもありますが、サロンド毘沙門はそんな街中に突如現れます。

ドアを開けると……。まず目に入るのがお店の奥で回るミラーボール、そして白いキャップにパンダのトレーナーを着たマスターの姿。この時点ですでに緊張はほとんど解けて、今日のお酒は間違いなくおいしいなという確信に変わります。

カウンターに座り、お隣にいる常連さんの様子を伺いながら一杯目のお酒は耳馴染みのない「スパイスレモン焼酎/炭酸割り」にしてみました。そして実はお腹がぺこぺこだった私の視線は、自然と頭上にあるアクリル板に釘付けに。充実、魅力的なメニューが並ぶ中、「にんじんしりしり」の文字に小さな歓声をあげながら早速いくつかお食事のメニューも頼んでみました。注文をドキドキ待つ間、店内のあちこちをじっくり見渡します。天井の角に隠れたお人形や壁に貼られたディープなフライヤーも目に楽しい空間です。

余韻に浮かぶ、スパイスレモン

冷えた「スパイスレモン焼酎/炭酸割り」を一口。スッキリと、決して甘くないスパイスレモン焼酎にひとしきり感動して、このお酒の正体はなんなんだと気になって仕方がありません。麦焼酎にクローブという香辛料、そして薄切りレモンを漬けているという毘沙門オリジナルのお酒だそうです。叶うことならば瓶ごともって帰りたいほど、美味しいこのお酒。他のお客さんからの注文も止まない中、私たちの前に届けられた、“にんじんしりしり”の優しい美味しさと唐揚げの絶対的な安心感に思わず唸りながらぐびぐびとお酒が進む時間でした。

何杯目かのおかわりを頼んだ頃、近くでお店をされているという常連の女性のお客様たちが入ってこられました。まさにこの世の酸いも甘いも噛み分けたような……という表現がぴったりのオーラを纏うみなさまの登場でお店の空気も、夜も、ぐっと深まります。

そして気がついた時にはマスターも私たちもみんな一緒になって話しているこの空間に、嬉しい気持ちが止まらない。素面では中々話すことができないような話題を、たった今出会った年齢も職業も、立場も違う私たちが同じ場所で気持ちよく“良い加減”に話し合える。「幸せだなぁ」と思いながら今でもその時間を噛み締めることができます。お酒もおいしい、マスターとの会話もおいしい。そして、またあのお姉さまたちに絶対お会いしたい。そんなふうにして、もしかしたら「行きつけのBAR」ができるのではないでしょうか。翌日からも私の気持ちはサロンド毘沙門にどっぷりとつかったまま、余韻の中に浮かんでいます。

大人がのびのびと遊びながら真剣に話すにも、少しドキドキしながら学生が覗くにも、最良の場所です。壁を自在に光らせながら回り続けるミラーボールのあるあの空間、サロンド毘沙門というなんともありがたい名前のついたBARで過ごす、すてきな時間をぜひ。

サロンド毘沙門

住所:〒606-8227 京都府京都市左京区田中里ノ前町8 1階
営業時間:19:00 ~ 2:00
定休日:木曜日
アクセス:叡山電鉄「元田中」より徒歩3分、京阪「出町柳」より徒歩15分


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