京都ナポリタンリップ

喫茶文化を象徴するフード、ナポリタン。
ナポリタンを提供する京都の喫茶店にインタビューします。
味のこだわりやその店の歴史、
京都のお昼の参考になるような情報をお届けします。
たぶん、読み終えたらナポリタンの口になるはず。

ナポリタンリップ#03京都「喫茶チロル」 二条のほっと一息つける場所

昭和 43 年に創業された、二条駅近くにある『喫茶チロル』。
道路の角の大きな COFFEE の文字がお出迎え。
店に入ると温かな照明と背の低い椅子とテーブルが並べられた可愛い内装が、柔らかく心地よい雰囲気を与えてくれます。

そんな喫茶チロルのイタリアンスパゲッティー(いわゆるナポリタン)についてお話を伺いました。

※以降ナポリタンを商品名のイタリアンスパゲッティーと表記
―喫茶チロルさんは隠し味にマーガリンを使っているとお聞きしたのですが、いつから使われているのでしょうか?
創業者の父が作ったレシピなのでいつからマーガリンが使われていたか、なぜ使われているのかというのは定かではないです。創業当時からこのイタリアンスパゲッティーがあったかも分かってないです。
正確には何も分かりません。物心ついた頃には今の作り方になっていました。でも、父の味をそのまま引き継いで提供しています。
―使われている具材の種類やこだわりはありますか?
具材は、玉ねぎ、ピーマン、マッシュルーム、ハムです。それはもう最初からずっとです。
ソースもケチャップとトマトピューレをほぼほぼ同量で入れ、割り増しして作っております。
麺は前日までにボイルしてそれを冷蔵庫で寝かせて使う。コシのないふにゃふにゃした麺が特徴です。

僕が考えたレシピじゃないので、創業者の思いがどこにあるのか僕には分かりません。この店は、父親の会社が倒産し両親が何か商売をと始めたんです。でも、2 人ともまさにど素人。見よう見まねで大体こんなもんかっていう形でやり始めたんが本音だと思います。
イタリアンスパゲッティー/¥800(2025.7月時点)
―お店のメニューはどのようにして開発されたんですか?
うちのお店のレシピは大体、お客さんが作ってくれたといっても過言ではないんです。お客さんが提案してくれたものを、うちの母親が提供するという形で出来上がったメニューが多いです。焼きめしに卵をのせるとか、全部お客さんが提案してくれました。
味付けに関しても、カレーなどはその時の創業当時のバイトさんが、よその店のレシピを持ち込んできて良さそうだと思ったのがきっかけで作られました。
―食器にこだわりはありますか?
ずっとオーバル型のお皿です。
昔、出前配達で何十件も得意先があって届けていたので、あの形でないと出前の箱にたくさん入らないんです。
―いつごろから喫茶店のお手伝いを始めたんですか?
20歳くらいの時からですね。ここの従業員さんが 2人同時に抜けられたタイミングで始めました。

親の苦労も知っていたこともあり嫌々だったのですが、ある時お客さんのサラリーマンのお父さんが、店の席でため息をついているのを見かけまして。会社や家でため息をつけないこの人は、ここにため息をつきに来ているのだと思いました。
別に、料理の修行や勉強をしたわけでもないです。だけどそういう場所を作るのはもしかしたら自分に合っているかもしれないという気持ちになり、そこからちょっと手伝ってみるかという感じになりました。

実はその後、父がインタビューで「働く人たちの止まり木になれるような店でありたい」と話していて僕と同じような考えをしていたことを、だいぶ経ってから知りました。
インタビュアーによる味の感想
程よく香る隠し味のマーガリンと、一晩寝かせたもちもちの麺に広がるトマトの風味。さらに具材の楽しい食感が加わり、最後まで飽きることなく、気づけばペロリと食べ終えていました。

忙しい日常の中で、「ため息をこぼしていい場所」って意外とないと思うんです。
でもここでは思わずため息をつくことが出来る、気持ちをふっと緩めてくれるような空気がありました。
飽きない美味しさのナポリタンと、心地の良い雰囲気の店内を恋しくなってまたフラッと立ち寄りたくなります。
今日のリップ
住所 : 〒604-8306 京都府京都市中京区門前町 539-3
営業時間 : 8:00 ~ 16:00
定休日 : 日曜・祝日
アクセス : 京都市営地下鉄 東西線 二条駅から徒歩約5分 / 二条城前駅から 徒歩約7分
電話番号:075-821-3031
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