
突然ぐっと気温が下がりました。例年からの反省のもと、限られた秋を余すことなく堪能しようと必死になるうちにお酒の量も増え続ける、今日この頃。夜の気候が気持ちいいことに喜んで、家に帰る時間もだらだらと遅くなる事実を反省しつつ、そんな日々のおかげで今回も素敵なBARに出会えた報告です。
北白川と哲学の道の交差点のすぐそばに、大きなガラス扉が目を惹くワインバー「HOWENE(オーウェン)」があります。実はこのお店の前の道は毎日バスで通る通学路。日常に追われるような目まぐるしさもないくせに、窓の外に意識をむける情緒を持ち合わせていないせいでこんな素敵なお店ができていることに気がつかずに過ごしていました。頼むからもっと繊細であってくれ、と願うばかり。
ですが、この辺りには珍しいと言いたくなるぐらい一際目立つおしゃれな雰囲気なのに、うかうかしていると見落としてしまう、みたいな 街にすっと溶け込むこの佇まいもたまらない。見つけた時の喜びもひとしおです。この日は尊敬する大人の方にお誘いいただき、昨日あたりからすっかり日も暮れるようになった時刻、19時ごろに伺いました。
お店に入った途端、目に、耳に飛びこむのはたくさんのレコードが並べられたおしゃれな棚と、素人でも違いがわかる質のこだわられた音楽。照明の絶妙な明るさとカウンター、椅子、音楽は全てがきちっと計算されたように調和して店内にたゆんでいます。
今までのカウンターに感じてきた緊張とはまた違う緊張感を覚えながら席に着くと、ここはワインバーであることを思い出し、白ワインを注文。聞いてみるとナチュラルワインを数多く扱っているそう。ナチュラルワインというと、私のふわっとした知識の中では「飲みすぎても頭が痛くならないワイン」、つまり化学肥料や酸化防止剤などの添加物が入っていないワインのことです。二日酔いになりにくく悪酔いしない、と言われますがもちろん油断は禁物。ワインと一緒にリエットと田舎パンも頼みました。
ワインのこともリエットのことも田舎パンのことも詳しくありませんが、この三つが一つになった時の相性の良さは、インド料理でいうところのカレー、ナン、ラッシー。日本食で言うところのそば、つゆ、日本酒、といえるのではないか。私たちがそばと日本酒でうるっとくるように、フランスの街(きっと田舎)で古くから多くの人たちに愛されてきた味であると想定して、遠い京都から海の向こうへ思いを馳せながらいただきました。パンもご近所のパン屋さんのものだそうで、購入できるのがなんとも嬉しいです。
秋の気候も相まって、ゆったりと過ぎていく時間の流れに甘えているうちにいつも通りお酒がすすみ、オレンジワインまで出していただく頃にはオーナー、江頭さんの経歴が話題に。このお店は昨年末にオープンされたそうですが、それまでは海外にいたり、東京でバリスタをされていたり、ライブハウスで働かれていたこともあるそうで……。まだ二十代後半とは信じがたい、盛りだくさんの人生経験に憧れは止まることなく、こうしてここ北白川で出会えたことのほうが妙な気がするほど。そんな方と未来の話や今の話をしていると自然と心も軽くなり、お酒も一層美味しく感じ、体に回るお酒もなんだかいつもより、正当なルートを辿りながら体を巡っていくような、そんな賢ささえ感じます。
秋の夜長、ふとしたきっかけで贅沢な時間を過ごしながら良い酔い方をして帰路に着くこと、それほど幸せなことが一年のうちにどれだけあるでしょうか。お酒に飲まれる夜があってもいいけれど、こんな夜こそしっかり記憶しておきたい。「HOWENE」で過ごす忘れたくない夜は、どうしようもない一日ですらとっておきの一日に変えてくれるはずです。
住所:左京区北白川東久保田町7
営業時間:17:00-24:00
定休日:火曜日
アクセス:バス停「銀閣寺道」より徒歩2分
左京区北白川「HOWENE」