京都「いいBARに出会いなさい」

三条新町「酒陶 柳野」

三条新町「酒陶 柳野」

南座に顔見世のまねき看板があがり、あぁもう12月か。と思っているうちに気づけば今年が終わりそう、というのは京都で暮らせばこその年末の風物詩。振り返るとほとんど何も覚えてないな、みたいなお馴染みの年末を今年も迎えようとしています。来年こそは何かしよう、来年こそは。と責任を翌年に持ち越すところまでがセットのたわいもない12月の日常も、かえって幸せの証拠なのかもしれません。しかし、捲土重来(けんどちょうらい)。年末の惰性に流されず、今回は少し気合を入れて書きたい、そんなBARです。

三条新町「酒陶 柳野」

贅沢な余白

小雨を肌に感じる金曜日の10時半ごろ、遅がけの集合でBAR「酒陶 柳野」にお邪魔しました。実は今回で二度目の訪問。初めて来た時、あの柳野さんに……!とどきどきしながら伺ったことを覚えています。三条新町の角を西向きに歩いていくと「酒陶 柳野」と書かれた看板がさりげなく見えるはず。少し開けるのに勇気がいる木製の扉を開けると、茶室を思わせる簡素な空間と直線の美しい上品なカウンターが迎えてくれます。そんな中で一際目立っているのが、ドット柄のシャツにスタッズ付きの蝶ネクタイを締めるマスターの柳野さん。この日はすでに常連のお客さんで店内は賑わい、マスターも大忙しです。
 
BARといえばカウンターの向こう側にずらっとお酒が並ぶ絵を想像してしまいますが、ここは違います。お酒は抽斗のなかにきちっと納められ、飲み物のメニューもありません。無駄のない贅沢な余白が柳野の魅力です。注文は好きなお酒や飲み方、今の気分なんかを思うままに伝えれば完了。いろいろわがままを言って、まずは樽の香りしっかりめのウィスキーでハイボールを作っていただくことにしました。なんとここ、お造りからお椀まで本格的なお食事のメニューも豊富で、素材にこだわった丁寧なお料理が深夜まで提供されています。食事は済ませていたものの、もちろん、おでんとお漬物を一緒に頼みました。

三条新町「酒陶 柳野」

ほどなくして目の前にお豆腐と水菜のおでんが。水菜のほろ苦さと香り深いハイボールとが最高の相性となって体に染み渡ります。お店の名前に「酒陶」とあるように、器やグラスもこだわり抜かれた品々で、全てが空間と完璧に調和しています。そして、密かに存在感を放つお茶目な箸置きに、マスターのスタッズ付き蝶ネクタイの部分の個性がうかがえるのも楽しいところ。

三条新町「酒陶 柳野」

ここにしかない体験

2杯目はぜひシェイカーを振るマスターが見たい!とウィスキーサワーを頼みました。ウィスキーサワーとは、ウィスキー、砂糖、レモンだけで作られる古典的なカクテルのこと。常連さんの「ヨッ」という合いの手を受けながら、文字通り腕を振るって作ってくださった一杯は、甘酸っぱさにウィスキーのずっしりとした風味の余韻が残る、忘れられない味です。
 
美しいグラスが次々と出てくる中、目が釘付けになったのはころんとしたフォルムに桜の模様が描かれたもの。フランスのかつてのデルヴォーで作られた100年以上前のグラスだそうです。目にすることさえ貴重な美術品で、最高のお酒が飲める贅沢。口にするもの、目にうつるもの、使うもの、全てにおいて目一杯の「本物」を全身で体験することができる、京都で必ず行かなくてはならないBARだと確信しました。奥には個室のテーブル席もあり、そこから見える広い中庭もまた、季節の移ろいを美しく捉える素晴らしいお庭です。
 
いつもの気楽な酒場でお酒を浴びるのもいいけれど、たまには。いや、定期的にここへきて、背筋を伸ばしながら贅沢な時間を過ごすことが酒飲みのあるべき姿なのかもしれない。来る前よりちょっとだけ素敵な大人になったような気になって、静かな余韻を持ち帰る夜でした。

三条新町「酒陶 柳野」

酒陶 柳野

酒陶 柳野
住所:京都府京都市中京区釜座町33
営業時間:17:00~24:00
定休日:なし
アクセス:烏丸三条より西に徒歩5分


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