京都「いいBARに出会いなさい」

四条河原町「Bar SILENT THIRD」

松の内も過ぎ、お正月の余韻からもすっかり抜け出して日常に戻る毎日になりました。京都は15日までが松の内とされていますが、そうはいいつつも実際には恵比寿神社、十日戎の残り福の11日が過ぎるといよいよ平常運転という感覚でしょうか。2026年、一発目は「Bar SILENT THIRD」の紹介から始めたいと思います。

賑わいのほんの先

街の中心部、四条の河原町から少しだけ歩いて御幸町の六角を少し下がったビルの2階に「Bar SILENT THIRD」はあります。一つ通りに入るだけで街の賑やかさからは一転、静かなこのあたりは、まさに良いBARが潜んでいる気配を存分にまとっています。こうして一つ道を曲がるだけでも新たな一面を見せてくれるのが京都の掴めなさでもあり、面白いところです。

店内は、かなり大きなL字のカウンターと四人がけのボックス席という広さ。この日はマスターの橋本さんがお一人で営業されている日でしたが、すでに残された席は数席と大賑わいです。座り心地の良いお気に入りの椅子に座って一安心、この日最初のアルコールということで生ビールを注文しました。何を隠そう、このお店では他ではなかなか飲めないレッドカイトエールというスコットランドの生ビールが提供されています。赤みのかかった琥珀色のビールをマスターが泡の状態にも気を配って丁寧に入れてくれるのを見ているのが幸せです。

香ばしい香りと特有の苦味のなかにほんのり甘味のあるこのビールは、もしかすると普段ビールをあまり飲まない方にもおすすめできるかもしれません。ガツン、と苦味を楽しむというよりは、優しい口当たりで一杯目におすすめです。なにより、レッドカイトエールを生ビールで飲めるというのが嬉しいポイント。

SILENT THIRDという洞察

これぞバーテンダー、と言いたくなるような出立ちのマスター、橋本さんはBAR好きで知らない者はない、ともいえる「K6」で修行を積んだ筋金入りのバーテンダーです。K6といえば京都のBAR文化の象徴とも言われる名店。お店の細部や橋本さんの美学の根底にK6の哲学が根ざされており、まさにオーセンティック、正真正銘という言葉がぴったりの仕事ぶりは絶大な信頼を寄せることができます。
 
店名の「SILENT THIRD」はカクテルの名称ですが、バーテンダーは喋らなくてもドリンクでお客さんと会話することができる、と修行時代に常々言われていたことがこのカクテルとリンクしたんだとか。一番目にお客様、二番目はバーテンダー、三番目がドリンク。飲み物が言葉を話す事は無いですが、どんな飲み物でもお客様へのメッセージを込めた一杯を提供したいという想いで「SILENT THIRD」と名付けたそうです。まるで見透かしたように、何も言ってなくても今の気分にはちょうどこれ!という一杯を出してくれる。そんなバーテンダーが橋本さんです。

素敵なお話を聞いて、サイレントサードを頼まないわけにはいきません。今夜もシェイカーを振ってもらわなければ。イチオシのスコッチウィスキーとオレンジのリキュール、そしてレモンジュースで作られるその一杯は、甘酸っぱさとウィスキーの重みの混じり合う、陰影のある味わい。心なしかひとくちひとくちを大切にして飲みたくなるような、不思議と私のなかでも思い入れのあるカクテルになりました。

バーテンダーにはなんだか心を見透かす、占い師のような能力が備わっていることを知ったこの夜。席に座った瞬間、いや扉を開けたその瞬間から私たちは橋本さんの研ぎ澄まされた洞察力に浴びせられているのかもしれません。今日は絶対に良いお酒が飲みたい、そんな日はここにくれば大丈夫。あなたに合った一杯をすでに橋本さんは知っています。

四条河原町「Bar SILENT THIRD」

住所:中京区御幸町通り六角下る伊勢屋町354-1 伽羅ビル2階
営業時間:14:00-24:00
定休日:不定休
アクセス:「京都河原町駅」から徒歩6分


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