京都ナポリタンリップ

喫茶文化を象徴するフード、ナポリタン。
ナポリタンを提供する京都の喫茶店にインタビューします。
味のこだわりやその店の歴史、
京都のお昼の参考になるような情報をお届けします。
たぶん、読み終えたらナポリタンの口になるはず。

ナポリタンリップ#10重厚感あるレトロ喫茶で、トマトソース仕立ての上品なナポリタンを

世界遺産・二条城の東大手門を出てすぐ、東堀川通り沿いにある「コロラドコーヒーショップマスサン」。創業から約52年続く老舗喫茶店の一つです。
店前に見えるのは、「焼きたてパン」と大きく書かれた旗。ここは自家製パンを店内で製造し、お店でそのパンをいただくことも、買って帰ることもできるユニークな喫茶店です。店頭で販売しているパンは、レジでちょっと売っていますというレベルではなく、お店の中にパン屋さんがあるようなクオリティの高さ。
そんな事前情報を元に、どんなナポリタンに出会うことができるのかとワクワクしながら店内へお邪魔しました。
ーお店の名前の由来と創業について教えて下さい。
創業は昭和48年、1973年ぐらいだと思います。場所は今と変わらずですが、創業については僕もあやふやで(笑)
もう52年くらいになるのかな。うちの祖母が始めたお店で、そこから親父が継いで、次に私です。
名前の由来に関しては、うちの祖母の名前が「ますこ」なんですけど、親戚に「ます」が付く名前の人が祖母含め3人いたそうです。そこから最初は「スリーマス」と名付けてたみたいなのですが、あんまりかっこよくないということで、「マスサン」へ変更したそうです。お客さんからもよく聞かれます。
ー喫茶店で自家製パンを製造しているのはあまり他では聞いたことがなく、とてもユニークですよね。それは先代の方が始めたものなのでしょうか?
自家製パンを作り出したのは僕からなんです。カフェだけでやっていくんじゃなくて、何か新しいことをしたいと思い始めたのがきっかけです。喫茶店なので、自家焙煎か自家製パンかなと考えました。自家焙煎は技術もいるし時間もかかりそうだと思い、パンなら比較的早く身につけることができそうだと始めました。
ーご自身でパン作りを研究されたということですか?
大学生の頃、夏休みに一カ月程度知り合いの家に行ってパンの作り方を教えてもらったことがあったんです。そこから10年くらいたってから今のパンへの挑戦ではあるんですけど。始めると決めてからまた約一カ月半知り合いのパン屋さんへ修行に行きました。自分の店でパンを始めたとき、最初は職人さんと共に製造していましたが、今では僕1人で午前中にパンを製造しています。
基本的には喫茶で提供するパンを製造するのがメインですが、余力があれば菓子パンの製造なども行って店頭で販売もしています。あまりパン屋さんほどのおしゃれなパンではないんですけど(笑)
でも、自家製パンを目当てに食べに来てくれるお客さんはありがたいことに沢山います。「ランチで食べたパン美味しかったから、家に買って帰りたい」とか言って丸々一本買ってくださる方もいます。
ーナポリタンのソースに特徴はありますか?
普通はケチャップで作るところを、うちはケチャップだけでなく自家製トマトソースも使用しています。ナポリタン以外にもパスタのメニューがあり、そこでトマトソースを使用するので隠し味としてナポリタンにも入れてみたらとても美味しかったんです。色んなナポリタンがあるからね。
ナポリタン ¥900
ーマスサンさんのナポリタンは、見た目からお洒落というか、上品なナポリタンだと感じます。
お洒落かなあ(笑)
使用している具材は玉ねぎ、ピーマン、マッシュルームです。仕上げとして上に粉チーズとパセリも振りかけています。
実は粉チーズにもちょっとこだわりがあって、普通のよくある粉チーズは使いたくなくて、エダムチーズの粉チーズを使用しています。またパセリはフードプロセッサーに入れて細かく砕いてチーズと共にのせます。その方が香りも良くなると感じています。
ーそのこだわりがお洒落なナポリタンの要因だったんですね!ナポリタンは創業当初からあるメニューですか?
パン製造を始めたのが22年前、その数年後にこれもまた僕がナポリタンを始めました。
元々はナポリタンを始めるつもりは無かったんです。どこでもナポリタンはあるなあと思っていたので。なのでトマトソース、ミートソースの二種類のパスタのみをメニューに入れていました。でも続けていくうちに、スタッフや常連のお客様から「ナポリタンもあってもいいかも」という意見をいただくようになり、ナポリタンのメンバー入りが決まりました。他のメニューでもそうですが、常連のお客さんとの会話でいただく色んな意見を取り入れるようにしています。
ー「常連客の声で生まれたナポリタン」素敵ですね。味を決めるうえで大切にされていることはありますか?
ケチャップを普通より少し長めに火に入れるようにすることです。使用しているのが国産のケチャップで、国産のものは火入れをすると甘味がより出てくるので長めに炒めることを意識しています。そのケチャップと自家製トマトソースのこだわりのおかげか、常連さんには「他と比べて食べやすいナポリタン」だと言ってもらえたりします。
また、ランチではサラダとドリンクと自家製パンの食べ放題のセットを用意しているところもこだわりです。パンが食べきれなかったらお持ち帰りをすることもできます。
ー広々として高級感のある内装が印象的ですが、創業当初から変わらないものはありますか?
変わっていないのは、コーヒーの味です。中々コーヒーの豆も取りにくくなってきていますが、うちは7種類の豆を配合して特別に焼いてもらっているので、コーヒーだけは変えないようにしようと意識しています。常連のお客さんが多いので味が変わってしまうと、「今日のコーヒーは苦い」とかって気づかれるんです。味をキープするのは簡単なことではないですね。
創業当時から使用しているというサイフォン式コーヒー
内装に関しては創業からは変わってしまってるんですけど、壁に飾ってある絵は僕の祖母が描いたりしたものです。浮彫画とか色々習っていたみたいです。その他にも、看板に描いてあるティーカップのイラストなんですけど、実はよく見ると「マスサン」が変形してティーカップになっているんです。気づかない人も多いのですが、祖母がこれもデザインしたそうです。
ー最後になりますが、お店を続けてきてよかったと思うことは何でしょうか?
良かったと思うことは、小さい頃から私自身がお店で遊んでいたので、その頃から来てくださっていたお客さんが、「大きくなったね」って今でも来てくださったりすることかな。また昔学生さんだったお客さんが何年か越しに来てくださって、共に懐かしむことができるのもありがたいです。中々古い喫茶店も無くなってしまっている中で続けてこられているのは幸せなことです。
創業当時の写真
インタビュアーによる感想
自家製トマトソースを使用しているため、ナポリタンは淡いトマト色で、他と比べてあっさりとした印象を持ちました。食べてみるとソースとケチャップがバランスよくブレンドされ、上にかかったパセリの味が良く効き、上品でしつこくないナポリタンになっています。野菜のサイズ感も丁度よく、そのソースと具材の絶妙なバランスが、常連さんが「食べやすいナポリタン」と言う理由なのではないでしょうか。
どの質問にも少し控えめに答えてくださる店主ですが、先代の思いや技術を引き継ぎながらも、自分のスタイルでよりお店を進化させていく姿や、小さなこだわりを大切にする思いは、内装や自家製パンの製造に限らず、自家製トマトソースのナポリタンにも現れていました。
今日のリップ
住所:〒604-0054 京都府京都市中京区押堀町40
営業時間:7:00~18:00
定休日:木曜日
アクセス:京都市営地下鉄東西線 二条城駅前 2番出口から徒歩1分
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