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夏まつりで出会う
“京の色“ 
プリンスホテル、夏の「KYOTO in TOKYO」
イベントレポート  

京都の町に息づくものづくりを、東京で体験する。今年3月に開催され好評だった「KYOTO in TOKYO」と首都圏のプリンスホテルとのコラボレーション企画の第二弾が、8月17日(土)・18日(日)の二日間、グランドプリンスホテル高輪・グランドプリンスホテル新高輪で開催されました。
毎年恒例の人気イベント「高輪 夏まつり2019」に合わせて、「京友禅」や「和蝋燭」のワークショップや、夜間は京都の初冬と早春を告げる風物詩「京都・花灯路」で使用される行灯により、日本庭園内の一部をライトアップし、夏の夜を幻想的に彩りました。夏休みシーズンということもあり、手仕事体験には親子で参加する方も多く、大いに賑わいました。
今回のレポートでは、ひときわ盛り上がった18日(日)の模様をお届けします!

文・室作幸江 写真・上樂博之

真剣勝負で生み出される、京友禅の色彩美

普段は入れない茶室で京都体験ができる機会とあって、盛況となった。

江戸・元禄時代、扇絵師として人気を馳せていた宮崎友禅斉によって確立された「京友禅」。扇絵で学んだ斬新な絵柄を着物に取り入れ、古来より伝わる染色技法を改良することで、色彩豊かで華麗な模様染めの京友禅が誕生しました。

そんな京友禅の魅力を広く伝えたいと活動しているのが、女性作家3人(関純子さん、吉田麗さん、井上真好さん)のユニット「soin(そわん)」。それぞれが職人として着物制作に携わる一方、京友禅ならではの技術を使って、手に取りやすい価格の小物などを作っています。また、今回のような手仕事体験のワークショップなども行い、伝統の技を知ってもらうための発信活動にも取り組んでいます。

「手描友禅は出来上がるまでに10以上の工程がありますが、その中で今日は『挿友禅』と呼ばれる、模様に色をつける工程を体験してもらいます」
今回の「京友禅の色挿し体験」の講師役を務める吉田さんが、集まった参加者を前に、まずは手描友禅の工程を説明します。
その工程は、白生地に青花(露草の花から採取した汁)で描く「下絵」や、染色した際に色が混ざらないように、糊で模様の輪郭に線を引く「糸目糊置(いとめのりおき)」など、どれも興味深いものばかり。余分な糊や染料を洗い落とす「水元」には、水質のやわらかな京の地下水が使われているそうで、これが京友禅ならではの鮮やかな発色の秘密かもしれません。


筆に顔料を含ませたら、皿のふちでしごいて余分な液を落とすのがポイント。

ワークショップでは本来の染料ではなく顔料を使い、あらかじめ小風呂敷に描かれた文様に好きな色を挿していきます。赤、青、黄色、緑など全8色。初心者向けには牡丹、腕にちょっと自信のある人には橘の文様が用意され、自由に選べます。

「色を挿すときは、薄い色から濃い色へ。しっかり筆を立ててくださいね。大事なことは、隣り合った部分をすぐに塗らず、ひとつ置いて塗り進めていくこと。そうすれば、互いの色がにじまず、綺麗に仕上げることができます」と吉田さん。
下絵の文様の内側を塗っていくのですが、コツをつかむまで一苦労。緻密で繊細な筆さばきが求められます。


文様は植物や動物をモチーフにしたものが多く、それぞれに特有の意味が込められています。

うだるような暑さの日曜の午後。ワークショップの開かれた、グランドプリンスホテル高輪の日本庭園にある「茶寮 惠庵」の一室は森閑とした空気に満ち、まるで別世界にいるかのよう。誰もが無言で筆をとり、黙々と作業に没頭していきます。

約1時間後、最初に完成させたのは小学3年生の男の子。親子で参加したそうで、お母様いわく「本物の職人さんに教えていただけるなんて貴重な機会。非日常な空間で体験できたのもよかったですね」と満足げです。


涼しげな「茶寮 惠庵」の一室で、一心に取り組む参加者の皆さん。「本当に集中できた。“無”になれた」との感想も。

soinとして東京でワークショップを開催するのは初めてという吉田さんも、参加した方からのうれしい言葉に笑顔がこぼれます。
「技術というのは、聞いて知るのと、実際に作業して知るのとでは、理解の度合いが全然違います。京友禅の多彩な色も文様も、多くの先人たちが切磋琢磨しながら作り上げてきたもの。そんな歴史こそ、“京都らしさ”ではないでしょうか。私たちもしっかりと受け継いでいきたいですね」


ワークショップでは、soinによる京友禅も展示。現代的なモチーフをあしらった優美な仕立てにため息がもれます。

soin -そわん-
https://www.facebook.com/couturier.soin/

 

手で学ぶ、和蝋燭のやわらかな灯り


1回500円で体験できる「おちょこ蝋燭制作体験」。蝋を流し込むのがムズカシイ!

ところかわって、グランドプリンスホテル新高輪の宴会場「国際館パミール」前の広場では、「中村ローソク」によるミニワークショップ「おちょこ蝋燭制作体験」も開催されました。おちょこのような型に米ぬか蝋を流し込んで和蝋燭を作り、不燃紙に思い思いの絵を描いてシェードにするというものです。


「中村ローソク」の四代目、田川広一さん。前日の17日には「茶寮 惠庵」でワークショップを行いました。

「和蝋燭は西洋ローソクに比べて融点が低いから、炎はほの暗いオレンジ。やさしくて温かみのある色でしょ? ゆらめく炎は『1/fゆらぎ』に近い波動といわれ、癒やしの効果があるんですよ」と代表の田川広一さん。春の「KYOTO in TOKYO」のイベントにも参加した、125年続く工房の四代目です。確かに、大きくゆったりと揺れ動くオレンジ色の炎を見ていると、心が自然と落ち着いていきます。

「古くから仏事に使われてきた和蝋燭には、白色と朱色があります。白色が日々の“お光”に使うのに対し、朱色はお正月やお盆、法要など、ご先祖様にうれしいことを報告するときなどに使います。花などの絵が描かれた絵蝋燭は、お仏壇に飾るお花の代用として作られたのが始まりなんです」

初めて聞くことばかりに驚いたと告げると、「うれしいですね」とちょっと意外な言葉。
実は、和蝋燭の職人さんはいまや全国で10人ほどに激減し、後継者不足の危機に陥っているのだとか。だからこそ、風前の灯火の和蝋燭を未来に伝えていくために、まずは興味をもってもらうことが大事なのだと熱く語ります。とくに子どもたちにこそ伝えたいのだ、と。


夏の宵にぽっと浮かび上がる和蝋燭の灯りが、一人また一人と、人を呼び寄せます。

「和蝋燭はハゼ蝋や米ぬか蝋など植物性の原料でできているため、石油製の西洋ローソクと違い、体にも環境にも悪くない。芯が太く、消えにくいというメリットもあります」

春に続いて二度目のイベント参加となった田川さんは、春よりも家族連れで参加してくれた人が多かったことに大きな喜びを感じたそうです。きっと参加した子どもたちにとっても、宵闇にやさしく揺れるオレンジ色の灯りは、忘れられない夏休みの1シーンとなったことでしょう。


出来上がったおちょこ蝋燭を並べてみたら・・・。温かなオレンジ色に心が和みます。

中村ローソク https://www.kyorousoku.jp/

夏の夜を彩る、京の灯


インタラクティブアート「ヒカリ和音」の向こうには夜店がずらり。夏まつりらしい風情。

日もすっかり暮れると、庭園のあちこちに灯りが点ります。なかでも目を惹くのが、今年の夏まつりの目玉のひとつ、「ヒカリ和音」。庭園のシンボルであるソメイヨシノに約60個の青・緑・白の提灯が仕掛けられたものですが、なんと人のアクションに反応して音楽が流れ、音に合わせて提灯が光り輝くというユニークなインタラクティブアートです。

賑やかな一角から少し離れた小道には、行灯のやわらかな灯りが。夏まつりの夜の見どころ、「京都・花灯路」の行灯を用いたライトアップです。「京都・花灯路」は、京都の夜の新たな風物詩をめざし2003年3月より東山で行われ、その2年後の12月からは嵐山でも始められたもの。日本情緒豊かな露地行灯の「灯り」といけばな作品による「花」により彩られた京都のまち並みは、昼間とは違った幻想的な雰囲気に包まれます。
そんな今の京都名物が彩る散策路は、まさに“東京で感じる京都”。行灯のやわらかな色彩やそこかしこからの虫の声が、過ぎゆく夏を感じさせます。


朱色の小さな行灯が夜道をほんのりと照らし出してくれます。

【京都・花灯路開催情報】
・「京都・嵐山花灯路-2019」 12月13日(金)~12月22日(日)
・「京都・東山花灯路-2020」 3月6日(金)~3月15日(日)
http://www.hanatouro.jp/


今回のイベント企画に携わった京都市産業プロジェクト推進係長の西村和晃さんは、二日間を振り返って「東京で京都の伝統文化を伝えることに大きな手応えを感じた」と言います。
「若い女性も多く、いかに東京の方が京都に関心をもっているかを再確認できました。来年はオリンピックもありますし、もっともっと発信していきたいですね」
その言葉どおり、10月からはザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町とコラボした企画を開催されるとのことです。詳しくはこちらをご覧ください。

京友禅に和蝋燭と、京都のものづくりの美をお伝えした今回のイベント。脈々と受け継がれてきた職人さんたちの技はもちろんのこと、ものづくりの歴史の中から京都ならではの色が紡ぎ出されていることを教えてくれた二日間でした。


幻想的な世界を演出してくれる「京都・花灯路」の行灯。京都の夜の風物詩として定着しているのも納得。