ナポリタンリップ#14古き良きあの日が蘇る、喫茶スイスで穏やかなひとときを

閑静な道を抜けると目に入るストライプ模様の装飾屋根。主張しているわけではないのに、確かな温かみと存在感を感じる、そのお店は「喫茶スイス」。
重厚感と安心感の調和する店内で昭和歌謡をBGMに、店主の有田さんにお話をお伺いしてきました。
ー喫茶スイスと言う可愛らしい店名の由来はなんですか。
スイスって自分も行ったことはないんですけど、聞いて皆さんが穏やかな印象を持ってくれはるというか、来てくれはった方のそんな思い出になってくれはったら嬉しいなっていう願いを込めてつけました。あとは覚えやすい名前かなと思うので。
おすすめの昭和歌謡を書き込める用紙が各テーブルに置かれている
ー流れている昭和歌謡の曲選は有田さんのこだわりでしょうか。こういった紙(下記画像)を拝見したのですが、お客様にリクエストをお伺いされるのでしょうか。
80年代位の昭和が自分の子供時代で、その生活が染み付いていて。来てくださる同世代の方やお年が上の方には「あ〜懐かしいな」、若い世代の方には「こんな歌あるんだ」と思ってもらえたらと、昭和歌謡をお店とお客様共通のkeyにしました。基本1960年から 89年の終わりまでしかかけていないです。
これ書いてるのは、お客さんと共通のお話がなかなかね、自分は無闇には声かけられないので。でも帰らはる時にちょっと書いて渡してくださったら、当時の話とかお客様とちょっとコミュニケーションを取らせてもらえるかなっていうのがあって。許可がとれたらインスタのストーリーであげさせてもらっているんですね。で、自分がちょっと感想を書かせてもらって、手書きなのも昭和を感じられる要素の一つかなっていうのもあるし、来てくださった方へのお礼を兼ねていますね。実際皆さんがどんな歌を聞かはるのかわかったら、また来てくれはった時にもし流せたら嬉しいなとか、そういうのも思っています。
ー世界観作り以上の深い意味が込められているんですね。とても温かい繋がりを感じます。
皆さんめっちゃ忙しい毎日で、なんらかの役割を担ってはって、もう大変な毎日の中で正直数ある喫茶店でドアを開けてくれることってある意味奇跡に近いと思っているので。そんな中でここに来てくださる有難さを痛感しています。めっちゃ楽しいですね。自分が子供の頃両親がめちゃくちゃ喫茶店に連れて行ってくれたので、喫茶店もう絶対やりたい!って感じで、うん。勝手に楽しんでる(笑)
ー昔からの夢を叶えられたということですね。とても素敵です。お店は喫茶エルシドさんから受け継いだとのことですが、どのようなご縁だったのですか。
みんなには無謀やと言われながらもかなり勢いを味方にしました(笑)
前の仕事辞めて 1年間ぐらい喫茶店でバイトしていたときに、近くの不動産屋さんに絶対喫茶店したいからいいところあったら教えてって頼んでいたんですよ。そしたらええのあったよってエルシドさんを教えてくれて、もうその月で営業を終えるって仰っていて。是非ここに出したいって思ったのがきっかけですね。
ー内装などをそのまま引き継がれた理由はなんですか?エルシドさんの頃のお客様もいらっしゃるのでしょうか。
前のオーナーさんもおっしゃってたけど、80年代ってすごく喫茶店ブームだったんです。だからこんな 1枚ガラスとか1枚板とか使って贅沢に内装を作れた時代で、それを残したいなって。そういったものを自分が使わせていただけるのもめちゃくちゃ有難いことですし。
このレリーフはエルシドさんへの感謝を込めて、外さず置かせてもらっているんです。これだけは絶対外したらあかんなと思って。
オーナーさんもしょっちゅう来てくれはります。常連さんもね。昔の話もしてくれて有難いです。
ーナポリタンをメニューに入れたきっかけはなんですか。
子供の頃に連れて行ってもらった喫茶店にあったのと、オムライスとナポリタンとピラフの3つの王道を持ってきたかった。ピラフは味が決めきれなくってやめて、ナポリタンとオムライスの2つは揃えてます。あと自分も一番好きなパスタはナポリタンというのもあったので、ちょっと外せないなというのはありましたね。
ナポリタン / ¥900(税込)(2026年6月時点)
ー具材について教えてください。
具材は厚切りベーコン、玉ねぎ、ピーマン、マッシュルームです。単調な味にならないように大きめにして食感を楽しめるようにしています。
ー確かに具材の食べ応えがあります。ソースは何を使われていますか。
ソースはケチャップにあと3種類のソースを混ぜてかなり甘めにしています。自分の中で昔ながらのナポリタンってネタネタのスパゲッティの印象があって。ケチャップの酸味って熱を入れても飛ばしきれなくて、でも炒めすぎると焼きナポリタンみたいになって違っちゃうから。
メニュー自体は前のお店とは違って用意していて、自分の子供の頃の味を再現した感じですね。
ー甘めでとても美味しいです。またかなり太麺ですがそのこだわりはなんでしょうか。
喫茶店っていったら太麺だなと思って太めでいこうって。もう一番太いものを使っていると思うので、食べ応えがあるし、お腹も膨れると思うし、もちもちにしようと思ったら太いのを使った方が美味しいと思うので。細いのも細いので美味しいけどね。
ー入り口やメニューにいる三角帽子のキャラクター、この子についてお伺いしたいです。お名前とか。
スイスぼっちゃん(笑)自分が30年ぐらい持ってるキーホールダーがあって、これがあの元になっています。
ーインスタにこの子の漫画もあがっていますよね。
自分はやっぱり読み返してくれるようなインスタを願ってて、漫画描いたり、自分の下手なウクレレ載せて、誰かが見て習い事のハードルが低くなったり、もっとやってみようと思ってくれたりとか。何でもいいのでちょっと笑ってくれるかなっていうのもあって。
お客さんってここに来て気持ちを持って帰らはると思っているので、ここにいる自分がどうやったらお客さんにちょっと上向いたり、なんかしょうもなとか笑ってくれたり、何があれば嬉しいかなとか考えていて。喫茶店ってもう究極居心地やと思っているので、誰か喜んでくれるには何ができるんかなっていうのは思ってますね。

飲食業界ってやっぱりすごい世界やと思います。そこに入らせてもらってる自分の幸せかなと思っていますね。これからも頑張りたい。
【ナポリタンの具材】
・玉ねぎ
・ピーマン
・マッシュルーム
・厚切りベーコン
・ケチャップ
・3種類のブレンドソース
【インタビュアーによる感想】
銀食器の上で濃い色のソースと大きな具材が映える、食欲をそそるビジュアル。ケチャップの奥の複雑でありながらまろやかな甘み。野菜の食感やベーコンの食べ応えも楽しめると同時に、もちもちの麺は焼きすぎないことで舌触りや喉の通りまで気持ちよく食べられる。随所に確かなこだわりが散りばめられ、喫茶店特有の温かな居心地に彩りを添えてくれるような美味しさを感じました。
お話を伺う中で店主の有田さんから強く伝わってきたのは、子供の頃に通った喫茶店というご自身のルーツを貫く信念、引き継いだお店への敬意、そしてお客様への感謝や元気になってほしいという想いです。朗らかに微笑む店主の、その強く優しい人柄こそ、ナポリタンの隠し味なのかもしれません。
住所:〒604-8455 京都府京都市中京区西ノ京藤ノ木町6 倉橋ビル1F
営業時間:11:00~18:00(第一金曜は16:00閉店)
定休日:毎週月曜、第一日曜
アクセス:JR円町駅から徒歩10分
Share