

長らく秋らしい秋というのを経験しなかったせいで、はて、この頃の湿っぽい毎日こそが秋の実体なのか?みたいに考え始めました。青空になかなかお目にかかれない9月。
まさに。困った時はお天気の話、と毎度安直な前口上から始めているこの連載も、ついにその形から脱することのできぬまま今月が最終回となりました。惜しまれつつ、と自分だけでニヤリつぶやきながら小雨の降る夜に出会った、とっておきのBARの報告です。
若者も観光客も、そして酒場の玄人も、いろいろ行きかわす木屋町の三条を少し上がったあたりに今回のBAR、「Caamm Bar(カーム バー)」の黄色い看板を見つけることができます。乗り込んだエレベーターの扉が2階で開くと、唐突にお酒の壁が目の前を圧倒。10席はありそうな長いカウンターと、テーブル席が二つという広い店内です。まずはカウンターに腰を落ち着けて、壁中にこれでもかと行列をつくるお酒と対面する時間。幸せです。

一杯目はがつんと酔ってしまおうという夜にぴったりのダイキリを注文して、シェイカーを振るマスターをありがたく眺めます。(私はいつでもこのかっこいい瞬間を相手を気まずくさせてしまうほど凝視してしまいます。)まもなくすっと出されたダイキリは、鼻に抜けるライムの香りが度数の強いラムの重たさを隠してしまうよう。大事に大事に飲みたくなる感じがこのお酒の好きなところです。

どうしても気になるのはこの膨大な数のお酒をマスター一人で全て把握しているのか、ということ。マスター 田淵さん曰く、ウィスキーの産地ごとに分けているのでこの量でも把握できるんです、とのこと。いやあそうはいっても、と半信半疑でしたが、次々注文に応じてウィスキーを選ぶ田淵さんの手つきを見ればそれが本当だと確信できます。恐るべし。
2杯目は、せっかくなので豊富なウィスキーでカクテルを作ってもらうことに。ウィスキーとレモンジュース、シロップで作るウィスキーサワーに卵白を加えたカクテルです。見た目も可愛いこの一杯、ふわふわの卵白を通り抜けてまろやかになった口当たりが不思議で面白い。卵とウィスキーが出会いものだったなんて、知りませんでした。

こうしてまた嬉しい発見にBARで導かれた夜。どのBARでも毎度のように、くううと心にしみる瞬間があって、その度にただただありがたいなあと思うしか術はありません。なんというか、1日が助かるような。街にBARがある限り、そんなに迷わずに暮らしていけるんじゃないか、いやそうだろう。と、いろんなものをBARに背負わせても大丈夫。なんてったっていいBARは親切で偉大な拠り所です。

住所:中京区木屋町通三条上る大阪町528 遊里香ビル2階
営業時間:20:00~27:00
定休日:月曜日
アクセス:京阪「三条駅」より徒歩3分
木屋町三条「Caamm Bar」