ナポリタンリップ#18前田珈琲 半世紀前を味わえる、愛され守られたナポリタン

湯気の立つお皿に山盛りの太麺、艶やかな赤いケチャップソースとたっぷりの具材。
地下鉄烏丸線四条駅から徒歩5分のところにある前田珈琲 室町本店の定番ナポリタンは、1971年の創業から半世紀以上レシピを変えずに作り続けられている一皿です。ハム、玉ねぎ、ピーマン、マッシュルームをたっぷり使い、仕上げにじっくり炒めることで出す独特の照りと赤色が特徴です。
今回は、室町本店でマネージャーを務める方にお話を伺いました。
ーあの美味しさと照りはどうやって出しているのでしょうか。
具材はハム、マッシュルーム、玉ねぎ、ピーマンだけなんです。本当にシンプルで。
炒めて、白ワインを加えてアルコールを飛ばして、茹でた麺を絡めて塩胡椒。ここまでは普通なんですけど、うちはそこで終わらせずに、もうしばらく炒め続けるんですよ。そうすると、あの照りときれいな赤色が出てくる。
でも、これが誰が作っても同じ味になるかっていうと、そうじゃないんですよね。正直、すごく難しいです。ベテランが作ると照りも色もしっかり出るのに、新人が同じ手順でやってもベタっとしてしまって、なかなか同じようにいかなくて。何が違うのか、数値化も言葉での説明も難しくて、結局は数をこなして体で覚えてもらうしかないんです。うちは京都市内に十数店舗ありますけど、どの店舗で食べても同じ見た目、同じ味を届けたいので、新人にはとにかく作って味見して、を繰り返してもらってますね。
ー社長も味見をされるとか。
はい、社長も今でも忙しい時間帯は厨房に入ったりしてますよ。新人が作ったナポリタンを味見して、これでいいってなるまで。うちの看板メニューって、レシピだけじゃなくて、そうやって人から人へ、店から店へ受け継がれてきた味なんですよね。
ちなみにチーズは、注文のときにかけるかどうか選んでもらえます。個人的なおすすめは、まずはかけずに食べてみてほしいかな。かけすぎると、本来のトマトの味がチーズの味に変わってしまうので。素材の味を活かした、うちなりのナポリタンをまず味わってもらえたらうれしいです。
ーこのナポリタン、そもそもどこから生まれたのでしょうか。
創業者がかつて「イノダコーヒ」で修業していたときに出会った、クリームソース系のスパゲッティが元になっているそうなんです。それをアレンジしていったのが、今のナポリタンの原型。具材の組み合わせも、そのイノダコーヒの流れを汲んでいるんですよね。
ー創業当時から、味は変わっていないのでしょうか。
はい。ナポリタンとホットミックスサンド、それに看板の「龍之助ブレンド」なんかは、創業当時からずっと同じ味を守り続けてます。龍之助ブレンドは香りと苦みを大事にしていて、渋みを抑えて、ほどよい酸味で後味はすっきり。ブラジル・グアテマラ・コロンビアの豆を吟味して配合した、昔ながらのブレンドなんです。ナポリタンとこのコーヒーは両方とも創業当時からの味なので、よかったら一緒に楽しんでもらえたら嬉しいですね。

一方で、メニューがずっと全部同じかっていうと、そういうわけでもなくて。玉子サンドは20年ほど前に加わりましたし、コーヒーも「フクブレンド」っていう、4種類の豆を均等に配合する、当時としては珍しいブレンドを15〜20年前に始めてます。
守るところは守りながら、新しいものも少しずつ取り入れてきた。だから20代の若い方から、70代、80代の昔ながらの常連さんまで、幅広い世代に楽しんでもらえてるんだと思います。
【インタビュアーによる味の感想】
太めでコシのある麺に、濃厚だけれど酸味はさっぱりとしたケチャップソースが絡み、ハム・玉ねぎ・ピーマン・マッシュルームの大きめの具材が存在感たっぷり。それでも十分に美味しかったのですが、話を聞いたあとに「まずはチーズなしで」というおすすめを知り、次に来るときは絶対にそちらで試そうと思いました。
一番印象に残ったのは、その照りと赤色を出すために、何度も練習を重ねているという話。見た目まで含めて、系列のどの店舗でも同じ味を届けたいという意志が伝わってきて、店舗を拡大しながらもそこにこだわり続けている姿勢に惹かれました。
また、話を伺う中で、コーヒーに対するこだわりの強さも感じました。イノダコーヒでの修行を原点に、配合ひとつとっても歴史があって、それを今も大切に守り続けている。ナポリタンや龍之助ブレンド等、変わらないメニューがある一方、玉子サンドやカスクパンのような新しいメニューも少しずつ増やしている。新旧が自然に混ざり合っているところも魅力です。チェーン店としての利便性はありつつ、どこまでもローカルに根付いた温かみのある店だと感じました。
今日のリップ
住所:〒604-8151 京都府京都市中京区蛸薬師通烏丸西入る橋弁慶町236
営業時間:7:00〜18:00(L.O.17:30)
定休日:無休
アクセス:阪急京都線「烏丸」駅・地下鉄烏丸線「四条」駅より徒歩5分
TEL:075-255-2588
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