書店主のおすすめ「京都本」

京都西陣の古書店「町屋古本はんのき」店主おすすめ京都の本3選

西陣の路地先にある、隠れ家のような古書店

西陣の街中の細い路地を奥へ進むと、平屋の長屋の端に突如古書店が現れます。場所を知っていないと見つけることが難しい、でも知ってる人がわざわざ訪れる、そんなお店に私は感じます。店主は3人在籍されていて、それぞれがオンラインで店舗を持ちながら実店舗の「町屋古本はんのき」へ日ごとに交代で店主をされに来ています。
私が伺ったときは空き瓶ブックスの水野さんが店主を務められていました。土間と二部屋に古書が並ぶ店内は思いのほか広々しています。店内の本は純文学や文庫本を中心に、つい手にとって読みたくなる本が幅広く置かれています。法学や経済学の専門書も豊富で、近所の大学生や予備校生が訪れることも結構あるそうです。喧騒から離れた隠れ家的古書店にみなさんも是非足を運んでみてください。

店主さんおすすめの「京都本」を紹介します。

私が伺ったときは空き瓶ブックスの水野さんが店主を務められていました。土間と二部屋に古書が並ぶ店内は思いのほか広々しています。店内の本は純文学や 文庫本を中心に、つい手にとって読みたくなる本が幅広く置かれています。法学や経済学の専門書も豊富で、近所の大学生や予備校生が訪れることも結構ある そうです。喧騒から離れた隠れ家的古書店にみなさんも是非足を運んでみてください。

店主さんおすすめの「京都本」を紹介します。

京都に暮らしながら読みたい本

『洛中洛外漢詩紀行』1994年刊 生田耕作、坂井輝久・著(非売品)

 

漢詩の輪読会に、フランス文学者として高名な生田耕作氏に誘われて参加していた坂井輝久氏が執筆した、漢詩と共に京都の土地を寄稿する「文芸鑑賞読本」であるこの本。いけばな嵯峨御流の月刊雑誌「嵯峨」として発表された内容に大幅な増補をして本にしたもので、嵯峨野篇から始まり洛中篇、洛外篇と続いています。

下賀茂の古本祭でも有名な糺の森の貢を開いてみると、江戸中期の儒者皆川淇園の詩、「ここに涼みに来ているけど、詩なんて一向に浮かばず、もう一杯いこう」としている漢詩が紹介されています。また、奥文鳴による納涼床の挿絵のある「都林泉名所図会」の中には「糺納涼(ただすすずみ)」という言葉を発見することができます。昔と今とを何世代も貫通する感覚を見つけ、それを共有することが出来ることは、本を読むことの醍醐味の一つです。

例えばどこかの地域や社寺仏閣を巡るとして、建物に注目するか、歴史に詳しいかなどで全く見え方が変わってくるように、漢詩を扱ったこの本を読んでみるのも良いかもしれません。

京都に訪れる前に読むべき本

『古寺の甍』1977年刊 多田智満子・著(¥2,000円 税込)

 

マルグリット・ユルスナールやアントナン・アルトー、マルセル・シュウォッブなどの翻訳でも知られる詩人の多田智満子氏が、仏教や歴史の見識を基に京都を中心とした寺院について書き連ねているのがこの本です。

仁和寺の貢では花と疫病について、高山寺では明恵上人と鳥獣戯画についてなどが語られていますが、例えば神護寺の貢の書き出しには、「まず、石段がいい」とあり、知識だけでなく直感的に愉しめる箇所もあります。

幼少期の数年を京都で過ごした著者ならではの古寺を眺める視点と、詩人の感性の源泉となり得る知識、感覚をうかがい知ることが出来ます。

京都に住みながら読みたい本

『西陣 美を織る暮らし1993年刊 神山洋一・著(非売品)

 

伝統産業として千年以上の歴史を持つ西陣織で有名な西陣という地域、職住一体の生活をする人々にスポットを当てた写真集です。

西陣という地名はよく聞きますが、実は京都の地名として明確な区切りのある土地ではありません。職人が多く住む歴史と文化を持った、洛中からみて北西にあたる地域というやんわりとした範囲であると理解することが出来ます。西陣の京町屋で古書店をされているはんの木さんだからこそ取り上げたい一冊です。1993年出版のこの本には、著者が1975年から1992年まで撮影した111枚の西陣が映っています。時代が映っていき、失われていく物事についても写真と共に著者は言及しています。多くの遺産を持つ古都京都の中で、織物に携わる業者が密集して住み独自の「色」を持ってきた西陣の30年以上前の姿と街の様子を、路地に分け入って散策してみてはいかがでしょうか。

町屋古本はんのき

住所:〒602-8357 京都府京都市上京区鳳瑞町225
電話番号:075-205-3286
営業時間:12時~19時
定休日:不定休


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